あなたは、日商簿記検定3級試験に合格するために必要なことは何かおわかりでしょうか?
日商簿記検定3級試験に合格するために必要なことは、TAC・クレアール・ユーキャンなどの通信講座を利用することです。そして、試験学習の締めに過去問を9回分(3年分)解いて分析することです。
その理由は、通信講座を利用することで試験範囲を網羅できるからです。さらに、過去問を分析することで、しない場合と比べて5~15点程度得点をアップできる可能性があるからです。
たとえば、合格率がかなり高めであった第140回の事例で解説をしていきます。合格率は52.70%と平均よりかなり高めであり、難易度としては易しいといえます。
第3問・第5問の総合問題は平易なので下書きを必ず行ってケアレス・ミスをしないことが1つ目のポイントです。そして、全問解き終わってから問題用紙と下書きを見ながら確認を怠らないことが2つ目のポイントと言えるでしょう。補足になりますが、通信講座を受講していればほぼすべての論点を受験前におさえられていたものと確信しています。
日商簿記検定3級試験は、全部で5問出題されます。その傾向はほぼ決まっています。学習の締めとして過去問を解くことでご自身で傾向を把握することができ、良問を解くことで基礎から応用へとあなたの簿記の実力アップを図ることができます。
そこで、このページでは日商簿記検定3級試験対策としての過去問分析の大切さを認識していただくために、第140回の本試験問題を解説していきます。
Contents
第140回のポイント
日商簿記検定3級試験に出題される問題は全5問、出題傾向はほぼ毎回同じです。したがって、出題のポイントをおさえておくことで、そうでない場合と比較して5~15点程度得点をアップすることができます。以下、第1問~第5問の出題のポイントを解説していきます。
今回は、仕訳を正確に切ることができれば、あとは問題を解くことに慣れているか否かがキーになる良問揃いでした。
第140回でのポイント!
第1問~第5問を見て気づくことは、経過勘定科目に関する出題が第1問・第4問・第5問と3題もあることです。
簿記は、会社を人と同じように1年で区切ることを前提にしているため、期間をまたがる処理として「経過勘定科目」は出題されやすいのです。
したがって、第140回の試験では、経過勘定科目を完全に理解していれば10点かせぐことができます。
第140回の問題解説
第1問から第5問まで順番に、重要性の高い事項について解説していきます。
第1問 仕訳問題(20点)
第1問では、個別論点を理解しているかが問われます。毎回、5問ずつ出題されると考えておいてください。1問正解で4点ですが、今回は易しい問題なので、できればすべての仕訳を正確に行って20点満点をとってください。
- 売上取引:売上諸掛(発送費用)は先方負担とありますが、「立替金」と「売掛金(に含める)」の2つの処理方法があります。文中に付与されている『掛代金とは区別して計上した。』をみて「立替金」を使いましょう。
- 旅費交通費の支払い:通常の仕訳です。なお書き「なお、入金時に全額費用に計上する方法方法も用いている。」にだけ注意しましょう。「仮払金」勘定は使わず、「旅費交通費」で一括費用計上してください。
- 地代の支払い:駐車場としての土地賃借料は「支払地代」勘定処理をします。
- 従業員の所得税の納付:類似問題(第142回第1問 2.)を参照ください。
- 借入金の返済:類似問題(第141回第3問)を参照ください。
何回も出題されている仕訳問題があります!
問題文中に使用してよい勘定科目が記載されているので、指定された勘定科目を使うこと!
第2問 買掛金元帳と仕入先元帳の記入(10点)
第2問で典型的に問われている問題です。
主要簿と補助簿の理解ができていることとそれぞれの帳簿記入が正確にできることとの2点を確認する問題です。是非とも満点をとってください。
1.主要簿と補助簿の理解
今回の問題に関係ある範囲内で、簡単に表でまとめます。頭の中にイメージをしてから本問に取り組んでいただきたいと思います。
帳簿の種類 | さらに分類 | |
主要簿 | ー | |
補助簿 | 補助記入帳 | 補助元帳※ |
主要簿をさらに、分解します。
帳簿の種類 | 帳簿の名称 | 内容 |
主要簿 | 仕訳帳 | 日々と取引仕訳 |
総勘定元帳 | 勘定科目毎に転記 |
2種類の補助簿で本問に関係する帳簿例をあげます。
①仕入先元帳
帳簿の種類 | 左記の区分1 | 帳簿の名称 |
補助簿 | 補助記入帳 | 仕入先元帳 |
②買掛金元帳
帳簿の種類 | 左記の区分2 | 帳簿の名称 |
補助簿 | 補助元帳 | 買掛金元帳※ |
商品有高帳 |
※買掛金元帳は、主要簿の総勘定元帳とも補助簿の補助元帳ともいえます。ただ、学習簿記上では、買掛金元帳は補助簿の補助元帳であると暗記してください。補助元帳の場合には、主要簿の場合よりも詳しい内容して帳簿管理をしやすくしています。これは、実務上非常に大切な帳簿です。
(参考)第143回第2問の補助簿
2.買掛金元帳と仕入先元帳を正確に記入できること
何回か実際に手を動かして、推定もしながら慣れることをおススメします。
3.買掛金元帳までの手順と注意点
ⅰ)仕訳帳に仕訳
ⅱ)総勘定元帳に転記:取引日・相手科目*・金額
相手科目*の記入方法
買掛金の総勘定元帳の相手科目には、返品とは記入しない。「仕入」と記入すること。
(参考)帳簿の勉強の仕方
第3問 合計残高試算表と商品有高帳(30点)
本問題は、「仕訳を正確に切ること」と「合計残高試算表に反映させること」ができれば、満点近くがとれる問題です。商品有高帳は「A商品の金額に配点がある」と考えられるので、下書きをして計算間違いをしない配慮が必要です。ごく平均的な問題であるので、いかに正確に早く仕訳ができるかが得点につながるポイントです。
余裕があれば、本過去問を解く際に配点がどの科目にあるかを考えるとよいでしょう。私(管理人)は、「合計残高試算表の残高金額=24点」「合計残高試算表の残高金額=3点」「商品有高帳A商品金額=3点」と考えています。
【期中取引】論点のみ書きます。
1.月中取引の正確な仕訳
- 11日の取引:備品購入の発送費用=取得原価
- 12日の取引:合計試算表に「消耗品費」勘定あり=期中「消耗品費」処理
- 26日の取引:銀行の取立手数料=「支払手数料」処理
2.商品有高帳の記入
問題文を読む際には、商品の払出単価の計算方法を必ずはじめにチェックしてください。今回は、先入先出法でした。
今回の問題はごく平均的な問題ですので、満点をとることが合格に近づきます。あまり論点になるような類の問題ではないため、得点を伸ばすためのテクニックを示します。
以下、得点を伸ばすためのチェックポイントを3つ挙げておきます。
1.合計残高試算表の問題であっても残高金額に配点が大きい。
2.商品有高帳は必ず下書きをすることでミス軽減につながる。
3.商品有高帳は商品単価計算がコア。解く前にチェックする。
第4問 伝票記入-3伝票制-(10点)
3伝票制を理解していて仕訳を行うことができれば、満点をとれる問題です。
1.個別論点:3伝票制の理解
①入金伝票:現金入金をした時記入する伝票
(現金=借方)
②出金伝票:現金手金をした時記入する伝票
(現金=貸方)
③振替伝票:①と②以外の取引時に記入する伝票
2.仕訳から伝票の種類を特定する
上記1.より現金勘定が借方の場合は入金伝票、貸方の場合は出金伝票になることは、理解されていると思います。そして、現金勘定の相手勘定をそれぞれの伝票の科目欄に記入すれば正解となります。そこで、ここでは振替伝票が関係する(設問1)の説明をします。
(設問1)商品販売をして当店商品券を受領し差額は現金返金
【仕訳】(単位:円)
伝票の種類 | 借方 | 貸方 |
? | 商品券 10,000 | 売上 9,500 |
? | 現金 500 |
【仕訳の分解】
伝票の種類 | 借方 | 貸方 |
振替伝票 | 商品券 9,500 | 売上 9,500 |
+
伝票の種類 | 借方 | 貸方 |
出金伝票 | 商品券 500 | 現金 500 |
【伝票の記入方法】
上記の(設問1)で複合仕訳を1対1に分解し、各仕訳の貸借に現金が関係する場合には入金伝票・出金伝票となります。現金勘定がない場合には振替伝票となります。
入金伝票・出金伝票は、現金の相手科目をそれぞれの伝票の科目欄に記入します。
振替伝票は、通常仕訳のまま借方・貸方の勘定科目を記入します。
複合仕訳は1対1の仕訳に直す!
振替伝票に注意する!
(参考1)第143回第4問 伝票会計問題
(参考2)第144回第4問 伝票会計問題
第5問 精算表作成問題(30点)
決算整理前残高試算表に、未処理事項と決算整理事項を加えて精算表を作成するごく普通の精算表を作成する問題でした。是非満点をとりましょう。
本問で間違える危険性があるものは、「経過勘定科目」の文中の書きぶりが少し難しくなっていることです。以下説明をしていきます。
【問題】決算整理事項 6.
受取地代は、偶数月の月末むこう2ヶ月分として¥12,000を受け取っている。
【仕訳】(単位:円)
借方 | 貸方 |
受取地代 12,000 | 前受地代 12,000 |
【解説】
「・・・偶数月の月末むこう2ヶ月分として・・・」と書かれてありますので、当期最終の偶数月12月にもむこう2ヶ月分の地代を受け取っていることが読み取れます。
したがって、12月に翌年の1月と2月の2ヶ月分の地代を先に受け取っていることになるため、12,000円は翌年度に属する収益として繰延べることが必要になります。上記の仕訳を入れることになるわけです。
収益の繰延べに関してわかりやすく書いてあるテキストがありましたので、以下に意味と会話形式でのやりとりを掲載します。
企業では、・・・継続的に発生する収益を、あらかじめ受け取ったり、またはあとでまとめて受け取ったりする場合があります。
(出所)ユーキャン『簿記3級講座 テキスト4』P.163
この場合の『あらかじめ受け取ったり』の部分が本問の前受地代に当たります。
《生徒》
『どの収益を見越したり、繰り延べたりするのか迷いそうです。』
《講師》
『主に、受取家賃、受取利息、受取手数料、受取地代など、毎月継続して発生する収益だけです。本試験ではちゃんと指示がありますから安心してください。』
《生徒》
『あっ、「受取~」とついていれば、すべて収益で見越したり、繰り延べたりするって考えていいんですか?』
《講師》
『う~ん、惜しいですね。「受取~」のなかでも受取手形だけは資産ですので、当てはまりません。気をつけてください。』
(出所)ユーキャン『簿記3級講座 テキスト4』P.164
いかがでしょうか?経過勘定科目がいまひとつわからないと感じている場合には、ヒントになるのではないでしょうか?是非とも活かしていただきたいと思います。
その他、本サイトで別途経過勘定科目の項目を設けて説明していますので、ご覧ください。
(参考)経過勘定科目の効果的な勉強法
まとめ
以上、第140回日商簿記検定3級試験問題の解説をしてきました。第140回は全体的に平易な問題が基本出題されていました。何度も解き、不明な点はなくしておくとあなたが受験する際に非常に役に立つでしょう。第139回に続き2回連続で易しい問題が出題されたため、次回以降は難問出題が予想されます。
過去問に関して、「直近の問題は出題されないから見る必要はない」と考える方がたまにいますが、決してそうではありません。テキスト⇒問題集⇒模擬試験⇒過去問とステップを踏んで学習を進めてきたあなたは、過去問を解いて分析することの大切さは十分おわかりだと思います。
過去問で合格率が40%前後の回は良問が多いといえます。したがって、あなたが受験する回と近い回のものであっても、出題の意図を把握して苦手な分野の確認をし、意味をよく理解してください。そうすることで、受験前の総復習として過去問は最適な教材となります。
冒頭で過去問を3年分(合計9回分)解くべきと書きましたが、テキスト⇒問題集⇒模擬試験とステップを踏んできた結果、どうしても時間が足りない方には1年分(合計3回分)だけでも時間を計って解くことをおススメします。このプロセスを入れることで試験の傾向をご自身で把握でき、本試験で見たことのない問題が出題された時にも慌てないで済むからです。
テキスト⇒問題集⇒模擬試験とステップを踏んできたあなたが見たこともない問題は、他の受験生も同様です。120分という時間配分をうまく使って、その問題は最後に回せばよいのです。7割以上得点をして合格することが目的なのです。
この記事を読まれたあなたが日商簿記3級試験受験を決意し、合格を勝ち取られることを私(管理人)は切望しております。