あなたは、日商簿記検定3級試験に合格するために必要なことは何かおわかりでしょうか?
日商簿記検定3級試験に合格するために必要なことは、TAC・クレアール・ユーキャンなどの通信講座を利用することです。そして、試験学習の締めに過去問を9回分(3年分)解いて分析することです。
その理由は、通信講座を利用することで試験範囲を網羅できるからです。さらに、過去問を分析することで、しない場合に比べて5~15点程度アップできる可能性があるからです。
たとえば、過去問で合格率が低かった第142回の事例で解説をしていきます。第142回の合格率は26.60%と平均よりかなり低めで、難易度の高い問題といえます。したがって、試験前に余裕がある場合のチャレンジ問題といえるでしょう。
日商簿記検定3級試験は、全部で5問出題されます。その傾向はほぼ決まっています。学習の締めとして過去問を解くことで出題の傾向を把握することができ、良問を解くことで基礎から応用へとあなたの簿記の実力アップを図ることができます。
そこで、このページでは日商簿記検定3級試験対策としての過去問分析の大切さを認識していただくために、第142回の本試験問題を解説していきます。
Contents
第142回のポイント
日商簿記検定3級試験に出題される問題は全5問、出題傾向はほぼ毎回同じです。したがって、出題のポイントをおさえておくことで、そうでない場合と比較して5~15点ほど得点をアップすることができます。以下、第1問~第5問の出題のポイントを解説していきます。
今回は、仕訳を正確に切ることができれば、あとは問題を解くことに慣れているか否かがキーになる良問揃いでした。
第142回でのポイント!
【合格への思考法】
質・量ともに良問であっても、合格率が30%を切る問題を作成できるということです。
第4問と第5問は、満点をとりにいく問題です。しかし、40点中34点程度はとりにいきたいところです。第1問は、1問落としても16点取ることができます。すなわち、第1・4・5問で、50点がとれるわけです。
残りの第2問と第3問では良問ですが、神経を使う問題の作りとなっています。しかし、40点中20点をとれば合格できるわけです。50%正解すればいいのです。このように分析していくことで「自分も合格できる」という気持ちになってこないでしょうか?
やみくもに問題を解くのみでなく、このような合格に向けた思考法も身に着けると試験も楽しめるようになってきます。試してみてください。
第142回の問題解説
第1問から第5問まで順番に、重要性の高い事項について解説していきます。
第1問 仕訳問題(20点)
第1問では、個別論点を理解しているかが問われます。毎回、5問ずつ出題されると考えておいてください。1問正解で4点ですが、できればすべての仕訳を正確に行って20点満点をとってください。
- 固定資産の売却処理:固定資産の期中売却をすべて理解していないと正解が難しい問題です。論点としては、「固定資産売却費の帳簿価額と売却額の差額を売却損益とすること」「直接減額方式の減価償却」「残存価額=ゼロのパターン」「当期分の減価償却費を月割で計算して売却の際に加味すること」といくつもの個別論点をつみあげてはじめて正しい仕訳ができる問題です。
- 給料の支払い:通常の従業員給料の支払いの仕訳です。簡単な設問では「預り金」勘定のみというケースがあります。しかし、本問では貸方科目で区別して仕訳する必要があります。「社会保険料預り金」と「所得税預り金」に分けて仕訳をしてください。
- 貸付金の回収:資金貸付する際は、経済合理性の観点から資金回収する際に利息を受け取ります。利息の計算方法が理解できているか否かを問う問題です。また『他人振出しの小切手』を受領する場合は通常「現金」で仕訳します。しかし、問題文中に「ただちに当座預金に預け入れた。」と記載されているため、本問の借方科目は「当座預金」で仕訳します。
- 有価証券の売却:帳簿価額と売却価額の差額を「有価証券売却損益」で処理します。帳簿価額が大きい場合は「有価証券売却損」で仕訳します。逆に、帳簿価額が小さい場合は「有価証券売却益」で仕訳します。その他の注意点は、売買手数料を手取りの売却価額から差し引くことです。
- 現金過不足:金庫にある現金は通常は毎日実査します。簿記検定試験の問題では、期中に実査した際の現金実際有高と帳簿残高が不突合の場合には、「現金」勘定と「現金過不足」勘定を使って帳簿側の「現金」勘定残高を金庫の実際有高に合わせにいきます。
1.の固定資産売却仕訳をひとつずつ丁寧に計算して仕訳することが、本問のポイントです!
問題文中に使用してよい勘定科目が記載されているので、指定された勘定科目を使うこと!
第2問 商品有高帳記入ー移動平均法ー(10点)
1.商品有高帳の記入ルール
①記帳ルール
・商品仕入=受入欄
・商品売上=払出欄
・在庫=残高欄に記帳
②各欄
・売価ではなく原価で記帳
③移動平均法
・商品を受入欄に記帳する毎に、平均単価を残高欄に記入
④期首手続
・前月繰越額を受入欄と残高欄に記入
⑤仕入れ戻し
・どの単価を使うかは、問題文を見て判断する
「払出欄に商品を仕入れたときの単価で記入すること。」という問題文なので、③で書いた残高欄に記入した平均単価は使わない。仕入帳に記入されている単価を払出欄に記入する。
⑤商品販売
・③の平均単価×数量=原価で払い出し欄に記入
⑥売上値引き
・商品有高帳には記入しない※
※売上値引きは、品質不良等で商品の売価を下げるための修正なので、原価には影響を与えないから。
これだけの情報を正確に頭にインプットした状態で本試験にのぞめば、満点をとるチャンスが十分にあります。
2.商品有高帳の記入に慣れること
「仕入帳」「売上帳」が問題文で与えられているので、仕訳を正確に行い、1.の記帳ルールを正確におさえて何度も商品有高帳に記入をしていき、慣れておくことが大切です。
本問を使って、何回も手を動かして記帳をしておいてください。
記帳ルールをおさえて記帳慣れすること!
第3問 合計試算表の作成 <難問>(30点)
本問題は、個別の仕訳を丁寧に正確に切って、合計試算表に反映させていく問題です。今回は、「当座預金」「当座借越」の個別論点を丁寧にT字勘定を書いて問題を解いていかないと正解にたどり着くことが困難な問題です。簿記の本質がわかる良問です。
いかに取りこぼしなく丁寧に仕訳と勘定記入ができるかによって点数に開きが相当でてきます。余裕があるときに、ひとつひとつ正確に取引・勘定を書いて。緊張感をもって解いてみると力がつくと思います。その意味では時間を決めて解くのではなく、逆に時間をじっくりかけて解いて自分の実力を試すのにもってこいの教材といえます。
【期中取引の個別論点】当座借越の理解と問題を解く際の注意事項
1.当座借越の理解
文章の締めに「なお、当店は取引銀行と¥1,000,000を限度とする当座借越契約を結んでいる。」とありますので、「当座預金」勘定のみでなく、「当座借越」勘定の動きも同様に正確におさえておくことが大切です。
なお書き以降には注意!
2.当座借越がある場合の解答での注意事項
・本問は、「当座預金」「当座借越」勘定について必ずT字勘定を丁寧に記入して解答するようにしてください。この作業を怠ると10点程度失点する恐れがあります。
(参考)第141回第2問でも当座預金に関する問題が出題されています。
残高試算表ではなく、合計試算表であることに注意!
第4問 伝票記入問題(10点)
本問は、第143回第4問の類似問題です。
第143回の詳細な説明をみていただければ本問は解く必要はありません。時間短縮のためには、このような手間を省くことも必要です。
また、伝票問題としては第144回第4問もあわせてみていただくことで、さらに理解が深まります。
第4問は伝票式会計の出題が多いので、良問を何度も解くこと!
第5問 財務諸表作成問題(30点)
決算整理前残高試算表に、決算整理仕訳を加えて財務諸表(損益計算書・貸借対照表)を作成する問題でした。
修正仕訳と決算整理仕訳とを正確に切ることができれば、満点をとれる問題でした。通常の精算表作成問題と同じと考えてよいでしょう。
本問のポイントは、未処理事項うち『仮払金の判明』の仕訳を正確に行えることです。
【問題】仮払金の判明
1.仮払金の残高は、収入印紙の購入にあてたものであることが判明した。なお、この印紙は当期末までにすべて使用済みである。
【解答】(単位:円)
借方 | 貸方 |
租税公課 2,000 | 仮払金 2,000 |
問題文中にある決算整理前残高試算表の仮払金の借方残高=2,000円であることから、いったん収入印紙を2,000円支払ったときに次の仕訳をしていることがわかります。
借方 | 貸方 |
仮払金 2,000 | 現金など 2,000 |
したがって、借方の「仮払金」が仕訳誤りであることが判明し、「租税公課」に振り替える仕訳を投入することになるのです。
この他は通常の個別論点であり、ごく普通に仕訳をして通常の簿記一連の処理をするだけで足ります。
まとめ
以上、第142回日商簿記検定3級試験問題の解説をしてきました。第142回は前半3問が丁寧に積み上げて解答を行うことが必要な問題が出題されていました。
通常の場合、合格率が30%を切ると悪問が出題されているものですが、今回に関していえば基本に忠実な良問揃いでした。簿記学習者に本当の意味で必要な細心の注意をはらって解答をする受験生の姿勢が、課題とされたように感じます。
過去問に関して、「直近の問題は出題されないから見る必要はない」と考える方がたまにいますが、決してそうではありません。テキスト⇒問題集⇒模擬試験⇒過去問とステップを踏んで学習を進めてきたあなたは、過去問を解き分析することの大切さは十分おわかりだと思います。
過去問で合格率が40%前後の回は良問が多いといえます。したがって、あなたが受験する回と近い回のものであっても、出題の意図を把握して苦手な分野の確認をし、意味をよく理解してください。そうすることで、受験前の総復習として過去問は最適な教材となります。
冒頭で過去問を3年分(合計9回分)解くべきと書きましたが、テキスト⇒問題集⇒模擬試験とステップを踏んできた結果、どうしても時間が足りない方には1年分(合計3回分)だけでも時間を計って解くことをおススメします。このプロセスを入れることで試験の傾向をご自身で把握でき、本試験で見たことのない問題が出題された時にも慌てないで済むからです。
テキスト⇒問題集⇒模擬試験とステップを踏んできたあなたが見たこともない問題は、他の受験生も同様です。120分という時間配分をうまく使って、その問題は最後に回せばよいのです。7割以上得点をして合格することが目的なのです。
この記事を読まれたあなたが日商簿記3級試験受験を決意し、合格を勝ち取られることを私(管理人)は切望しております。