簿記検定3級の資格取得を目指している方にとって、理解することが難しい勘定科目があると感じたり、帳簿の書き方がいまひとつピンとこないと感じたりすることがあると思います。
簿記検定3級を受験する際に、知っておいたほうがよい勘定科目は100個程度です。さらに、受験生の負担を減らすために暗記すべき勘定科目を絞り込むと、70個程度になります。この中で、理解が難しいと感じる勘定科目は10個程度しかありません。「約束手形」もそのひとつではないでしょうか?
簿記検定3級の場合、TACやユーキャンなどの通信講座をきちんと受講すれば、100個の勘定科目うち90個ぐらいは理解できます。したがって、残りの10個程度の勘定科目をしっかりと理解することが簿記検定3級に合格する秘訣です。
また、帳簿の書き方に関しては、通信講座を視聴している際にWEBやDVDなどを一時停止して、自分の手で実際に帳簿記入をしてみることでだいたいわかると思います。さらに、講義受講後自分で意味を考えながら、手を使って記入してみることで理解が深まります。講義中・講義後に自分で記帳練習をすることで驚くほど身につきます。
勘定科目と帳簿は、簿記3級検定を学習するときに別々の単元になっています。別個の単元だからといって、日を変えて学習するのではなく、1つの勘定科目を仕訳した後に総勘定元帳へ転記し、帳簿記入をして締め切るところまで一気に仕上げてしまうことで、学習効率を大幅にアップさせることができます。勘定科目と帳簿とを時系列で一本通して勉強することで、1つの科目に対する理解をぐっと深め、本試験での点数を効率的に伸ばすことができるのです。
そこでこのページでは、簿記検定3級試験を受ける際に難しいと感じる勘定科目のうち「約束手形」にフォーカスをあてて、帳簿を締め切るまでの勉強法を紹介します。
Contents
「約束手形」の内容を理解する
手形には「約束手形」と「為替手形」があります。ここでは、わかりやすくするために「約束手形」に焦点を絞り、「為替手形」は考えないことにします。
約束手形とは、記入または印字した手形を渡した人が、手形を受取った人に手形を記載した日に記載した金額を支払うことを約束する証券です。約束手形は、振出人と受取人の2者間の取引となります。
参考になりますが、最近では実務で「為替手形」を扱うことはほとんどなくなっています。
「約束手形」の種類と意味
約束手形は、4種類あります。「受取手形」「割引手形」「裏書手形」「支払手形」です。
受取手形
商品や労働などを販売した時、すぐに現金を受け取るのではなく、手形という証文の類で受け取る証書を「受取手形」といいます。商品などを受け取った相手は、実際の現金の支払いを遅らせることができます。
割引手形
「受取手形」には受け取るまでの期日があるため、通常の取引の場合、期日が来るまでは現金化できません。資金繰りが苦しくすぐに現金が欲しい場合は、受け取った手形(=「受取手形」)を銀行に持ち込み、手形を現金に換えることができます。この場合、手形に記載している金額から手数料を差し引いた金額を現金で受け取ることになります。これを「割引手形」といいます。
裏書手形
相手先から受け取った「受取手形」の裏に名前を書き、他人に回すことができます。これを「裏書手形」といいます。詳しくは、「受取手形」の裏に自分が受け取った証拠として、会社名と代表者名との印鑑を押印する、もしくは記載することで、商品などの売り主に約束手形を回すことができます。「受取手形」を裏書して他人に回すことにより、「受取手形」で商品などを購入することができます。
支払手形
商品などを仕入れる際、現金をすぐに支払わず、約束手形を切って購入することができます。この時使用する証書が、「支払手形」です。
「約束手形」の仕訳と説明
次に、約束手形の仕訳について説明します。理解しやすくするために、ここでは「約束手形」に関する例題を挙げ、仕訳処理をして説明をします。
【例題】
①OA機器専門店の斎藤電機株式会社は、大場PC店にパソコンを15万円で販売し、約束手形を受け取りました。また、斎藤電機株式会社は、尾藤有限会社にプリンタを販売し、10万円の約束手形を受け取りました。
②斎藤電機株式会社の斎藤社長は、服井銀行に行き15万円の約束手形を期日前に割り引いてもらい、2万円手数料差し引き後に13万円を現金で受け取りました。
③また、斎藤電機株式会社はDP株式会社から中古の複合機を10万円で購入し、尾藤有限会社から受け取った約束手形を裏書して支払をしました。
④斎藤電機株式会社は、大島株式会社から高性能スキャナーを12万円で購入し、約束手形を振り出しました。
【例題の図示】
【仕訳】斎藤電機㈱での仕訳
(単位:万円)
①受取手形
借方 | 貸方 |
受取手形 25 | 売上 25 |
※斎藤電機㈱は、大場PC店と尾藤㈲の2社から約束手形を受領しているので、15万円+10万円=25万円の2つの取引を合算して仕訳をしています。
②割引手形
借方 | 貸方 |
割引手形 13 | 売上 15 |
手形売却損 2 |
③裏書手形
借方 | 貸方 |
仕入 10 | 受取手形 10 |
④支払手形
借方 | 貸方 |
仕入 12 | 支払手形 12 |
【説明】
設問をよく読んで、一連の仕訳を起こし、妥当な勘定科目をあてはめていきます。
まずは、勘定科目として何を使うか、どのような仕訳になるかを理解することで、約束手形の処理の仕方が一目瞭然になります。
約束手形に関しては、上に示した仕訳と勘定科目でほぼ簿記検定3級の範囲をおさえることができます。
「約束手形」の理解を深める勉強法
次に、2つの視点をもって意味を考えて暗記することで、「約束手形」に関して理解がぐっと深まります。
約束手形の理解を深めるためには、「似ている勘定科目とセットで覚えること」と「意味が反対の勘定科目とセットで覚えること」をおすすめします。
この勉強法により、第1問目の仕訳問題と第4問目の伝票・勘定記入問題への対応がしやすくなります。
似ている勘定科目とセットで勉強する
「受取手形」と似ている勘定科目に「割引手形」と「裏書手形」があります。「割引手形」は、手形を受け取った後、その手形を期日前に現金化する場合に使う勘定科目です。「裏書手形」は、手形を受け取った後、その手形で支払う場合に使う勘定科目です。似ている勘定科目をセットで理解し、『時点(=とき)』を視点に考えることで意味の理解に役立ちます。
以下、発生する『時点(=とき)』を箇条書きにします。
- 【受取手形】・・・商品販売後に手形を受け取るとき
- 【割引手形】・・・受け取った手形を銀行で割引し、現金を受領するとき
- 【裏書手形】・・・受け取った手形で仕入れ先に支払うとき
似ている勘定科目をセットで理解し、『時点(=とき)』を視点に考えることで意味の理解に役立ちます。
意味が反対の勘定科目とセットで勉強する
受取手形と支払手形は正反対の勘定科目です。
- 【受取手形】受取手形は、商品・労働販売後に、代金を現金で受領するのではなく、手形で受領することです。
- 【支払手形】支払手形は、受取手形とは逆で、商品・労働を相手から受け取り、その対価として現金ではなく支払手形という証文の類で渡すことです。
こういった正反対の行為となる勘定科目は、セットで暗記しておくと理解が深まります。
「約束手形」の帳簿勉強法
最後に、勘定科目と仕訳を理解して暗記した後に、手形の帳簿の記入の仕方までおさえることで、手形に関する一連の流れが理解できます。
帳簿の種類と効果的な勉強法
帳簿には、主要簿と補助簿の2種類があります。主要簿は必ず記入しなければならない帳簿で、「仕訳帳」と「総勘定元帳」があります。補助簿は主要簿以外の帳簿で、記帳することにより、後で総勘定元帳と金額を合わせる際に非常に便利なものです。補助簿には、「現金出納帳」「受取手形記入帳」「支払手形記入帳」「商品有高帳」などがあります。
ここでは、「受取手形記入帳」と「支払手形記入帳」を事例として挙げます。補助簿記帳のルールを正確におさえることで、約束手形は完全に理解することができるようになります。
私のおすすめする勉強法は、TACやユーキャンなどの通信講座を利用することです。通信教育を受講するメリットは、理解が不十分な項目をWEBやDVDなどで何度も視聴し直して理解を深められることと、講師にわからない点を質問して回答をしてもらえることです。
通信教育が専門学校に通うよりも優れている点は、自分のわかりにくい項目の講義を繰り返し視聴できるため、理解が深まることです。不得手な項目をカバーしやすいため、受験の際に穴が少なくなるというメリットがあります。その他、自宅の近くに専門学校がない場合に、通学と同程度の質の高い講義を受講できるため通信教育は有効です。「ライブ感覚を味わいたい」「周りの受講生からの刺激を受けたい」場合は、専門学校通学を選択すればよいと思います。
また、通信教育が独学よりも優れている点は、講師への質問ができるためわからない点をそのままにしておく状況を回避できることです。その他、カリキュラムがしっかりしていて独学よりも時間管理がしやすいことが挙げられます。さらに、講師からの励ましやアドバイスをもらえるため、孤独を感じにくく学習のモチベーションの維持がしやすいといったメリットもあります。
ここでは、自分1人で行う勉強では、論点がぼやけてしまいがちになることを回避するための良い方法をひとつ紹介します。
それは、簿記検定3級資格を学習した方が使用したテキスト・問題集を利用する勉強法です。
簿記検定3級試験に合格をした知り合いの使った教材を譲り受けることができれば、その教材に書き込みされているメモ(〇印、括弧書き、赤線など)がわかりにくい部分です。また、教材の余白には「論理の流れを明確にすること」と「解答を導き出しやすくするための過程」が書かれていることがあります。「書き込み」「折り目」「マーカーが引いてあること」もあり、これらは簿記検定試験の受験生が難しいと感じる部分を把握する上で非常に役に立ちます。
サンプルとして、私が友人から譲り受けたテキストの書き込み部分の写真を掲載します。私は「通信教育テキスト・問題集で不足する項目がないか」「他の受験生がどのような考え方をしているか」を確認する目的で、福島三千代著『サクッとうかる 日商3級商業簿記テキスト』(ネットスクール出版)を譲り受けました。
この本は、『テキスト』『トレーニング』『過去問ナビ』の3部作になっており、初心者にわかりやすく書かれています。参考になりますが、現在は著者が変わっています。
ここで掲載した画像のように、注意が必要な箇所には書き込みがあるものです。以下、なぜテキストに書き込みをしているのかについて説明をします。
受取手形・支払手形記入帳の理解法
上記の『サクッとうかる 日商3級商業簿記テキスト』で、書き込みをしている方が意図していることは、次の2つです。
1.勘定科目を資産・負債の分類で確認する
当座預金(資産)、買掛金(負債)などを設問に書き込み、資産・負債の分類で確認をしていることがわかります。
2.設問の意味を自分のわかる用語に置き換えて確認する
手形種類の区分に記載されている「約手」がてん末欄で「支払済」となっていることから、「約束手形を振り出す」と意味を推測し、「支払手形(負債)の増加」と自分のわかる会計用語に置き換えて、意味の確認をしていることがわかります。
問題を解く際に書き込みをする理由は、自分の今もっている知識を総動員して、設問を自分の理解しやすい用語・解答にたどり着きやすい用語に置き直すためです。「書き込みをして」「書き込んだ用語を目で見て」「頭の中で知っている知識に置きなおして」「確認をする」ことで、考え方のプロセスが一目瞭然となります。
この思考プロセスの把握が非常に大事なのです。
以上のように、通信教育のテキスト・問題集のほかに、中古テキスト・問題集を知り合いから譲り受けて他の受験生のつまずきやすい項目の中身を分析することで、理解しにくい「約束手形」を自分の考え方として頭の中に取り入れて深く理解することができます。
その結果、「手形記入帳」の理解が深くなり、第2問目の帳簿問題への対応ができます。
まとめ
いかがでしょうか?このページでは、項目毎に分けて勉強するとわかりにくい「約束手形」について説明しました。簿記検定3級を学習する際に、勘定科目と帳簿(ここでは、補助簿)は単元が分かれています。
しかし、勘定科目と帳簿を区別して勉強するよりも、勘定科目の意味を把握した後に、続けて帳簿の書き方まで学習することで「約束手形」は理解を深めることができます。
まず、勘定科目の意味をよく理解して仕訳をします。次に、補助簿である「受取手形記入帳」と「支払手形記入帳」を記入して締め切ります。そして、最後に総勘定元帳と補助簿の金額の一致を検証することで、約束手形の学習が完了します。
難しいと感じていた勘定科目を「仕訳から総勘定元帳転記へ」と「補助簿記入から帳簿締切まで」との2つの作業を続けて行うことで、簿記学習が効果的に行えます。この学習法は、補助簿を作成する他の勘定科目にも同じように使えますので、簿記検定3級試験の点数アップに大きな効果があります。
簿記は通信講座で全講義を受講し、問題を繰り返し解くことで、合格に近づきます。このページでは、講義を1回受講しただけでは理解がしにくい「約束手形」に関して、勘定科目と帳簿の2つの面から確認することで、理解を容易にすることを意図して解説しました。
通信教育とあわせて、当サイトで学習のポイントを確認することで効率よく勉強ができ、短期間で簿記検定3級の内容が習得できます。具体的には、通信講座を受講すると同時にこのページで「約束手形」のポイントを確認していただくことで、通信教育を開始したときに学習効果を大きくアップさせることができます。
さらに、試験本番前に当サイトの各項目に目を通していただくことで、簿記検定3級の復習が効率的に行えます。
私(管理人)は、この記事を読まれた方の「約束手形」に関する理解が深まり、簿記検定3級試験の合格につながることを望んでおります。