あなたは、日商簿記検定3級試験に合格するために必要なことは何かおわかりでしょうか?
日商簿記検定3級試験に合格するために必要なことは、TAC・クレアール・ユーキャンなどの通信講座を利用することです。そして、試験学習の締めに過去問を9回分(3年分)解いて分析することです。
その理由は、通信講座を利用することで試験範囲を網羅できるからです。さらに、過去問を分析することで、しない場合に比べて5~15点の点数アップができる可能性があるからです。
たとえば、過去問第145回の事例で解説をしていきます。合格率は47.40%と平均より高めであり、難易度としては易しいといえます。『ケアレス・ミスをしないこと』と『個別論点(支払利息一連の処理・商品券の処理・現金盗難の処理など)をおさえておくこと』とが合格のポイントと言えるでしょう。
日商簿記検定3級試験は、全部で5問出題されます。その傾向はほぼ決まっています。学習の締めとして過去問を解くことで本試験問題の傾向を把握することができ、良問を解くことで基礎から応用へとあなたの簿記の実力アップを図ることができます。
そこで、このページでは日商簿記検定3級試験対策としての過去問分析の大切さを認識していただくために、第145回の本試験問題を解説していきます。
Contents
第145回のポイント
日商簿記検定3級試験に出題される問題は全5問、出題傾向はほぼ毎回同じです。したがって、出題のポイントをおさえておくことで、そうでない場合と比較して5~15点程度得点をアップすることができます。以下、第1問~第5問の出題のポイントを解説していきます。
今回は、基本問題が中心の良問揃いの出題でした。通信教育で計画的かつ網羅的に試験範囲を押さえた後、本サイトで推奨している過去問分析を行っていれば、合格点は十分とれるレベルの出題だったといえます。
第145回でのポイント!
①ケアレスミスをしないこと
②個別論点をしっかりおさえておくこと
・支払利息一連の処理
・商品券の処理(自店・他社)
・現金盗難の処理
これができると、10~15点得点をアップすることができます。
第145回の問題解説
第1問から第5問まで順番に、重要性の高い事項について解説していきます。
第1問 仕訳問題(20点)
第1問では、個別論点を理解しているかが問われます。毎回、5問ずつ出題されると考えておいてください。1問正解で4点ですが、できればすべての仕訳を正確に行って20点満点をとってください。
下記仕訳2以外は手を変え品を変え頻繁に出題される問題です。2.の商品券の問題以外は正解してほしいと思います。
- 資本の引き出し:個人と会社の区別をつけて理解をしておいてください。
- 自店発行商品券と他店発行商品券:久しぶりの出題です。
- 手形の割引:第138回の第1問設問3と同じ問題です。利息相当額の計算を求められているところが少し難しくしています。
- 固定資産の購入:土地購入のための付随費用が取得価額に算入されることを再確認しておいてください。参考になりますが、土地は減価償却や消費税は無関係です。
- 従業員の所得税納付:会社が従業員の給料からいったん預かって税務署に納税するため、「所得税預り金」勘定で処理します。
商品券処理の際、自店発行と他店発行の処理を明確にしておくこと!
問題文中に使用してよい勘定科目が記載されているので、指定された勘定科目を使うこと!(本問:「預り金」ではなく「所得税預り金」を使用する)
第2問 支払利息の処理(10点)
本問では、支払利息に関する一連の取引(仕訳⇒転記)を確実に行えることがポイントです。
1.期中取引:正確な仕訳・利息の計算
ポイントは、次の2つです。
・取引先からの借入
・借入に対する利息支払いの計算と仕訳
2.決算処理:決算整理仕訳・決算振替仕訳・負債勘定締切
・支払利息関係の計算・仕訳を確実にできること
・未払利息(負債勘定)の残高の振替を正確にできること
決算仕訳では、経過勘定科目も意識することが大事!
第3問 合計試算表(30点)
本問題は、仕訳を正確に行って合計試算表に反映させることがストレートに出題されています。
「仕訳を正確にできること」「引取運賃・発送費について先方負担と当店負担の2パターンで問われていること」「問に正確に答えること」に注意すれば、満点が取れます。素直な問題なので反復練習するとよいです。
【問題文】
1.12/5の取引
北海道商店より商品¥450,000を仕入れ、発注時に支払った手付金¥70,000を差し引いた残額は掛とした。なお、引取運賃¥1,000は現金で支払った。
2.12/13の取引
福島商店に商品¥100,000を売り上げ、代金のうち¥40,000を同店振出しの約束手形で回収し、残額は掛とした。発送費¥2,000は現金で支払った(当店負担)。
【取引仕訳】(以下、単位:円)
1.12/5の取引(商品の仕入れ)
借方 | 貸方 |
仕入 451,000 | 前払金 70,000 |
買掛金 380,000 | |
現金 1,000 |
※当店振出負担の仕入諸掛りは、仕入原価に含めて費用処理をします。
2.12/13の取引(商品の売上げ)
借方 | 貸方 |
受取手形 40,000 | 売上 100,000 |
売掛金 60,000 | |
発送費 2,000 | 現金 2,000 |
※当店振出しの売上諸掛りは、「発送費」勘定で処理します。
【その他】合計試算表作成のポイント
取引仕訳の各勘定科目の借方合計は借方に加算し、貸方合計は貸方に加算すれば、設問に対する解答となります。ここでは、残高試算表は問われていないため簡単な問題となっています。
第4問 処理の内容・仕方を問う問題(8点)
用語穴埋め形式で、「租税公課」と「資本の引き出し」を問う珍しい問題でした。問題自体は、簿記で出てくる税金と資本の意味が分かっているか否かを確認するだけです。しかし、出題の仕方が今までとは異なった切り口にしているので、面食らった受験生もいらしたと思います。
日頃形式の決まった問題しか解いていない「自分の頭で思考の過程を筋道をたてて整理していない」受験生にとっては、戸惑った問題だと思います。
このように従来の形式と異なった聞き方をしてくる設問の場合は、落ち着いて何を出題者は意図しているのかを考え、出題意図を理解した後解答すれば割と簡単に解けるものです。
1.租税公課:自動車税を納付した場合の借方
・自動車税:各種ある税金のひとつ⇒使用する勘定科目は「租税公課」であることが分かるはずです。
・個人の所得税納付:個人企業の事業から生じた所得にかかわる所得税を納付⇒使用する借方科目は「預り金」であることがわかるはずです。従業員の所得税をいったん会社が預かったあと個人に代わって会社が税務署に納付する際の仕訳を思い起こせば、勘定科目は決まります。
2.固定資産の資本的支出と修繕費:取得原価算入と修繕費との明確な区別
これは、詳しくは法人税法も絡んでくるため説明が難しくなりますが、ここではポイントを簡単に説明します。
・修繕費:設備を原状回復するためにかかる費用
(「現状」ではなく「原状」と書きます)
・資本的支出:設備を現状よりも機能アップする際にかかる支出
(こちらは、「現状」です)
老朽化したり破損したりして、原状回復させることを意図した場合、「修繕費」という費用科目でその期間の費用として落とします。それに対して、現状維持を超えて機能をアップさせることを目的として支出するものが「資本的支出」といわれます。
そして、固定資産の取得原価に加算されて減価償却費として耐用年数にわたって毎月費用化されることになります。
本問は、「個別論点の内容が完全に理解されているか」「切り口を変えて質問した場合に解答できるか」という視点で出題されています。満点を取るためには、個別論点をパーフェクトな状態までレベルアップしておくことが大切です。
出題者の意図は、少し深く突っ込んで聞いたときに解答ができるか否かを一歩踏み込んで問いたいことにあります。出題者の遊び心がでた問題ともいえるでしょう。
第5問 精算表作成問題(32点)
ごく一般的な精算表作成問題です。未処理事項・決算整理事項の仕訳を行い、精算表の修正記入欄に勘定科目毎に記入をして、損益計算書欄・貸借対照表欄に転記して締め切る手順で行えばよい素直な問題です。
以下の1.現金盗難の処理は問題文中から仮受金入金は仕訳済みという情報を読み取ったうえで、差額を雑損に振り替える処理を行うため複雑な処理です。したがって、問題文3以外は仕方ないとしても、他の問題文の仕訳は正確に行って正解にしたい問題です。
※未処理事項とは、本来決算手続きに入る前に期中取引での仕訳を行っていなけらばならないにもかかわらず行っていない仕訳を決算時期に行う仕訳を言います。
この問題でのポイントは2点です。
1.現金盗難の処理
【問題文3】現金過不足
現金過不足は現金盗難により生じたものである。また、当店では盗難保険をかけており、仮受金は盗難に対する保険金として受け取ったものである。そこで、現金過不足と仮受金を相殺し、差額を雑益または雑損として処理する。
【仕訳】(以下、単位:円)
①仕訳済み事項の確認:解答用紙にはすでに、次の仕訳は反映されています。
借方 | 貸方 |
現金 等 30,000 | 仮受金 30,000 |
②振替修正仕訳:現金過不足が生じた本問題文中から次の振替仕訳を入れることになります。
借方 | 貸方 |
仮受金 30,000 | 現金過不足 35,000 |
雑損 5,000 |
【解説】
上記で示しました①の保険金受取時の仕訳はすでに行っています。この情報を読み取ったうえで②の修正仕訳を行い、②の仕訳のみを解答用紙に反映させることが最大のポイントです。
2.売掛金回収の処理漏れ
【問題文2】未処理事項
売掛金のうち、¥40,000は、すでに当店の預金口座に振り込まれていたことが判明した。
【仕訳】(以下、単位:円)
借方 | 貸方 |
普通預金 40,000 | 売掛金 40,000 |
【解説】
一見何の変哲もない仕訳です。しかし、この後の【問題文6】で貸倒引当金設定の問題があり、貸倒引当金見積額設定の算式の中に、本問題文で未処理となっていた貸方の「売掛金」40,000円を差し引かなければ、「貸倒引当金繰入額」と「貸倒引当金」の金額を間違えてしまいます。
まとめ
以上、第145回日商簿記検定3級試験問題の解説をしてきました。第145回は全体的に質・量ともにバランスよく出題されており、平均的なレベルよりも少し易しい基本的な問題が出題されていました。
しかし、久しぶりに出題される問題や受験生を試す問題がありました。ご自身で日商簿記検定3級を受験する前に自信が出てきたときに解くとよい問題です。少し変わった問題への対応やケアレスミスをしないように細心の注意をして、問題に真剣に取り組むと非常に役に立つ問題です。
過去問に関して、「直近の問題は出題されないから見る必要はない」と考える方がたまにいますが、決してそうではありません。テキスト⇒問題集⇒模擬試験⇒過去問とステップを踏んで学習を進めてきたあなたは、過去問を解き分析することの大切さは十分おわかりだと思います。
過去問で合格率が40%前後の回は良問が多いといえます。したがって、あなたが受験する回と近い回のものであっても、出題の意図を把握して苦手な分野の確認をし、意味をよく理解してください。そうすることで、受験前の総復習として過去問は最適な教材となります。
冒頭で過去問を3年分(合計9回分)解くべきと書きましたが、テキスト⇒問題集⇒模擬試験とステップを踏んできた結果、どうしても時間が足りない方には1年分(合計3回分)だけでも時間を計って解くことをおすすめします。このプロセスを入れることで試験の傾向をご自身で把握でき、本試験で見たことのない問題が出題されたときにも慌てないで済むからです。
テキスト⇒問題集⇒模擬試験とステップを踏んできたあなたが見たこともない問題は、他の受験生も同様です。120分という制限時間の中でうまく配分を行って、見たことのない問題は最後に回せばよいのです。7割以上得点をして合格することが目的なのです。
この記事を読まれたあなたが日商簿記3級試験受験を決意し、合格を勝ち取られることを私(管理人)は切望しております。